お知らせ
「瓦」は自然に優しい屋根材です。
SDGsと瓦—瓦の境性能について
我々が扱う屋根材の「瓦」が極めてエコロジカルな性能を有し、今、盛んに言われております脱炭素化の流れに資する資材であることを皆様に知って頂きたいと考えております。
奈良には国宝、重要文化財である元與寺というお寺が有ります。1,400年前に飛鳥寺として建立されましたがその時に用いられた日本最古といわれる瓦が、今もなお用いられています。この事は、瓦が耐久性に富んでいるということに留まらず、改修の度に再使用することが出来る資材である事を示しております。
上越地域に於きましては、能登瓦が古くから使われてきましたが、建物を建て替える度に瓦を再使用することが古くから行われてきました。
また、屋根は、用いられている屋根材が何であれ、一般的に30~40年くらいで全面的なメンテナンスが必要となります。板金などは再使用できず、新しいものに変えることになるのですが、その点、瓦については、ほとんどの場合再使用が可能です。瓦は、木質や石油由来のルーフィングなどと呼ばれる下葺き材を敷き、その上に瓦桟という木材や銅線、釘などで止め付けますが、それらは年月と共に劣化します。そこで一度瓦を撤去して下地を新たにし、その後、外した瓦を納め直すことが「締め直し」や「葺き直し」と言われて久しく行われてきました。
合わせて重要なこととして、このような工事においては、廃棄物の量を大幅に減らすことが出来るという点です。
また、瓦を再使用することで材料費を圧縮することが出来るため、当然のことながら工事費も抑えることが出来ます。
「締め直し」や「葺き直し」は、解体された建物から出た古い木材に埋め木をして再利用する事などと同様に、日本の建築文化の一部として当たり前に行われてきましたが「スクラップ・アンド・ビルド」・「大量消費」の流れの中で廃れてしまい、このような工事が行われている地域はごく一部となってしまっております。
以前より、建築資材についても資源のリサイクルが求められて来ました。確かに板金の廃材なども再資源化されております。回収、運搬され、選別などを経て溶解され、さらに加工されて製品として生まれ変わるわけですが、それには再び多くのエネルギーや資源が費やされます。他の資材についてもほぼ同様です。 それに比べ、瓦はそのままで再使用できます。しかも、大抵の場合は、修復するまさにその場において再使用されるので、輸送のためのエネルギーさえも必要としません。
「瓦萬年」という諺をお聞きになったことが有るかとも思います。瓦は断熱性や遮音性という優れた性能を持ちますが、それに加え、一度作られれば何度も使うことができるということを本質的な機能の一つとして有する稀有な建築資材であると言えると思います。
また、このように再使用=再資源化する事は、世界的に喫緊の課題とされているSDGSで謳われている目標の12番目の「つくる責任、つかう責任」に応えるものであり、繰り返し用いることが可能である点は長期的に見た場合、高い省エネ性能を示すと考え得る事から、13番目の「気候変動に具体的な対策を」との要請にも対応するものとも言えます。
以上、既存の瓦の再使用について述べてきましたが、新築工事などに於いて用いられる新しい瓦も、将来再使用ができることを考えると、長きに亘って脱炭素化の流れに貢献できるものと言えます。これは、言い換えると高いコストパフォーマンス性を示すことにもなります。
全県的に見ても瓦が葺かれている屋根は非常に多く、そこに存在する瓦は、社会的には貴重な資源であり、住まわれている方にとっては大事な資産であるとお考え頂きたいのです。
まだ生かせる物を、その価値を知らないことで安易に廃棄されてしまうことが残念でなりません。
これまで述べてきたような瓦の環境性能について知って頂くことが、地球環境の危機に対して、ささやかでは有りますが、我々瓦業界が貢献出来る事ではないかと考えております。
更に、瓦については次のような事もお知りおき頂ければと思います。
震災報道などにより災害に弱いとの印象を持たれている方も多いと思います。しかし、被害の大部分は、雪が降らない地域の古い工法、ほとんど瓦を釘などで止めず、ただ並べただけの工法で作られた屋根の被害であり、当地のような多雪地域では瓦を一枚一枚しっかりと留め付けるため、メンテナンスさえ怠らなければ、ニュースで見られるあのような被害は起こらないのです。
加えて、「阪神淡路大震災」における被害を検証することにより、学術的な協力も得て、瓦業界として「防災工法」を確立してきました。「ガイドライン工法」と呼んでおりますが、その後の「東日本大震災」等においても、この防災工法に即して作られた建物には被害はほとんど生じませんでした。
又、「瓦は重いからと」心配せれる声も聞きます。しかし、屋根に乗せられている瓦の重さは、湿って重くなった雪10㎝とほとんど同じです。当地のような雪国のしっかり作られた丈夫な建物においては心配する必要がないものと言えます。
以上、瓦について縷々述べてきましたが、これにより、普段目にしておられる「屋根瓦」についての認識を新たにして頂ければ幸いです。